COLUMN

お役立ち情報

  • インタビュー

【石川県 ドローンポート実証】平時から有事へ、“フェーズフリー”でつなぐドローンの社会実装 ~庁内横断プロジェクトを主導した石川県 デジタル推進監室に聞く~

石川県は、能登半島地震(2024年1月)および奥能登豪雨(2024年9月)からの復興に取り組んでいます。その取組の一つとして、KDDI・KDDIスマートドローンとともに、ドローンポートを能登地域に常設し、平時の点検・監視から有事の災害対応までを対象としたユースケース実証を実施しました。

この取組を庁内でとりまとめたのが、石川県デジタル推進監室です。道路・河川・港湾・海岸など所管の異なる複数部局、および各市町とともに、令和7年11月から令和8年3月にかけて、奥能登を中心とした12拠点・延べ32ルート・計102回のフライトによる実証を行いました。

今回は、本プロジェクトを担当した石川県デジタル推進監室の竹本 太郎 氏に、取組の全体構想、庁内横断のマネジメント手法、実証で得られた成果と課題、今後の展望について伺いました。

今回お話を伺った方

石川県デジタル推進監室 兼 能登半島地震復旧・復興推進部
主幹(地域DX企画グループリーダー) 竹本 太郎 氏

竹本氏が所属する石川県デジタル推進監室は、県庁内のデジタル化・DXを担う「県庁デジタル推進課」と、県内各地域のデジタル化・DXに取り組む「地域デジタル推進課」の2課で構成されています。竹本氏のチームは地域DXを担当し、能登半島地震・奥能登豪雨からの復興をデジタルで支える「奥能登版デジタルライフライン」プロジェクトのもと、デジタル技術を活かした能登復興を進めています。

「石川県庁のデジタル推進監室の竹本と申します。私たちのチームは、能登半島地震や奥能登豪雨からの復興をデジタルで支えていこうということで、『奥能登版デジタルライフライン』というプロジェクトを立ち上げ、その中でデジタル技術を生かした能登復興を進めています」(竹本氏)

取組の全体構想 「“フェーズフリー”で平時と有事をつなぐ」

今回の取組のベースにあるのは、KDDI・KDDIスマートドローンが進める“フェーズフリー”なドローンの社会基盤化という構想です。両社は2025年10月、石川県能登地域(輪島市・七尾市)の公共施設など4箇所にAIドローンを常設し、東京・北海道からの遠隔運航による実証に成功しました。自動離着陸・充電が可能なドローンポート「Skydio Dock for X10」を常設することで、平常時と非常時を区別せず、平時の点検から有事の災害対応までを継続的に支える仕組みです。両社は、ドローンポートを全国へ展開し、地域防災拠点として活用することで、ドローンの社会基盤化を目指しています。

設置したSkydio Dock for X10

こうした構想に至った背景を、竹本氏はこう語られています。

「能登半島地震、そして奥能登豪雨では、ドローンが橋梁の点検や物資・医薬品の輸送など、災害現場でさまざまに活用されました。一方で、活用できる場面が事後になりがちで、本当に使いたい時にタイムリーに動けなかったという課題がありました。これは他のデジタル施策も同様です」(竹本氏)

「では平時からどう備えるか。ただ、いつどのような形で起きるか分からない災害に備え続けるのは、体制的にも経済的にも限界があります。だからこそ、平時のデジタル技術の活用が有事にもシームレスにつながっていく、いわゆる“フェーズフリー”の発想が大事だと考えました」(竹本氏)

この方向性と合致したのが、ドローンポートと高性能AIドローンの面的な展開という、KDDIスマートドローンの取組でした。当初は平時の物流活用も構想にありましたが、地域のニーズや要望は乏しかったといいます。一方、度重なる災害で地盤やインフラに大きなリスクを抱える能登の状況を踏まえ、インフラ点検や監視といったドローンのニーズが庁内から複数挙がっていました。こうした経緯から、今回のプロジェクトが組成されました。

庁内横断のマネジメント手法

自治体でのドローン活用は、部局ごとの単独利用にとどまりがちで、複数部局や市町を巻き込んだ展開は難しいのが実情です。道路・河川・港湾など所管の異なる各部局のニーズを取りまとめ、実証の座組みを構築するにあたり、竹本氏はデジタル部局ならではの立ち位置を挙げます。

「大前提として『餅は餅屋』。現場の事情やニーズを把握しているのは各部局です。一方で私たちは総務部のデジタル部局なので、ニュートラルに、既成概念にとらわれず動けるという強みがありました。KDDIスマートドローンさんと横軸で実証に加わる中でノウハウも蓄積され、新しいプロジェクトをファシリテートしていく役割を担えるようになってきたと感じています」(竹本氏)

さらに、デジタル部局には「チャレンジ」や他部局への“おせっかい”を肯定する風土があったこと、そしてプロジェクトのリーダーを務める浅野副知事(最高デジタル責任者:CDO)のリーダーシップが、推進を後押ししたといいます。具体的には、他部局の事例も含めて実績や経過を積極的に組織間で共有することを重視したといいます。これが「こんな使い方があるのか」「自分たちならこう使う」という横の意識醸成にもつながりました。

「CDOである浅野副知事には、トップダウンで各部局の幹部との意見交換会を実施いただいたり、土木部や危機管理部の防災訓練での実証、知事をはじめ全庁の幹部が出席するDX推進会議での実証など、ハイレベルでのアプローチも旗を振っていただきました。現場レベルとハイレベル、レイヤーごとにきめ細かく取り組めたことが、複数部局でいくつも実証が生まれた要因だと思います」(竹本氏)

一方で、デジタル所管部局である自分たちには“現場”がなく、各部局にとってドローンの新規導入は通常業務に加わる“追加業務”と捉えられがちだという点も意識したといいます。

「押し付けにならないことは徹底しました。その上で、私たちがニュートラルな立場で担える部分は『これは自分たちの仕事ではない』と言わず、積極的に関わる姿勢を示しながらコミュニケーションを行いました。特に初期の走り出しでは、KDDIスマートドローンさんとの調整やアイデア出しを私たちが積極的に担いました。実証が走り出すと、現場からも『こういうことがしたい』『ここを見たい』という前向きな声や循環が生まれていきました」(竹本氏)

ユースケース実証の概要:12拠点・32ルート・102フライト

各部局からの需要に基づき、令和7年11月から令和8年3月にかけて、奥能登を中心とした12拠点にドローンポートを設置。延べ32ルート・計102回のフライトを実施しました。

実証したユースケースは、平時・有事にわたる9分野です。具体的には、冬季道路状況の確認、ため池の貯水・堤体状況の確認、河川の堆積土砂・堤防等の確認、海岸の護岸等の状況確認、港湾の状況確認、砂防堰堤の確認、地滑り防止地区等の確認、不法投棄状況の確認、産業廃棄物処理場の保管量確認で、各部局のニーズに沿った撮影・点検を検証しました。

たとえば冬季の道路では、輪島市の中屋トンネル周辺で、日中・夜間ともに積雪状況を撮影しました。夜間撮影に対応したアタッチメントも活用し、降雪時の確認や除雪計画との連携を想定した検証を行いました。

一方、実運用に向けては課題も抽出されました。

主な課題は、能登半島特有の湿った雪がドローンポートの開閉やカメラのセンサーを妨げる事象、高低差の激しい地形で航空法上の高度150m未満の遵守が難しい場面、迅速な飛行に向けたNOTAM(航空従事者への通知)の運用、河川上空を飛行し続けたいが落下分散範囲に民家・公道があり画角が制限される点などです。これらの課題に対し、融雪マットの設置、シミュレーションによる事前検証、航空局・機体メーカーとの協議といった対策を進めています。

現場の声:ため池調査と海岸線の巡視

実証を進める中で、現場部局からもドローンの活用に関する声が寄せられました。竹本氏が例に挙げたのが、ため池の渇水調査と海岸線の巡視です。

「夏になると、ため池の水がどれくらい持つかを毎週のように現場で確認する調査があります。そこにドローンを活用して水位の状況を確認できないかと考えました。珠洲市の農林担当の方からは『地震があってから、なかなか現場に行けなかった』という話も伺っていて、まさにドローンだからこそアプローチできる課題だと感じました」(竹本氏)

一方で、人がアクセスしやすい場所は通信環境も整っており、ドローンも飛ばしやすいといいます。竹本氏は、「人が行きにくい、ドローンの強みが発揮できる場所」を改めてリスト化していきたいとしています。

海岸線の巡視は、複数部局にまたがる業務を一度の飛行で確認できる例だといいます。

「海岸線は、港湾課、農業基盤課、河川課、水産課など県庁内でも複数の所属に分かれ、さらに海岸沿いの道路は道路整備課、地滑り区域は砂防課と、それぞれの現場を見ています。ドローンが一度飛べば、その一つの映像を部局横断で共有できる。連携の仕組みとして、ドローンが軽やかに飛び越えていく部分だと感じました」(竹本氏)

一方で、地図上にドローンの軌跡とともに映像を表示したい、部局ごとに見たいポイントが異なるため映像をうまく集約したい、といった課題も挙がりました。竹本氏は「課題はありつつも、仕組みとしては非常に良い仕掛けができる」と話します。

全国の自治体へのメッセージ

最後に、「平時利用もできるなら導入したいが、なかなか一歩を踏み出せない」という全国の自治体担当者に向けて、メッセージを伺いました。

「ドローンポートの展開や自律飛行型ドローンによるインフラ管理は、通常業務にプラスアルファで取り組む領域です。現場で日々業務にあたる皆さんからすれば“アレルギー”があるのは承知の上で、トップダウンと現場での膝を突き合わせたミーティング、その両輪で進めていく必要があると思います」(竹本氏)

「組織横断を怖がらず、しっかり情報を横展開・共有していくことが、スタートラインに立つ上で大事です。私たちもまだ第一歩を踏み出したところ。これからも各所属と会話しながら、良いものを庁内で共有して進めていきたい。他の地域でドローンを活用した『おっ』と声が出るようなアイデアが出てくれば、石川県としてもぜひ相乗りさせていただきたいですし、デジタルで、かつドローンですから、フレキシブルに軽やかに飛び越えていきたいと思います」(竹本氏)

実際に、令和8年8月27日からの大雨では、石川県および志賀町からの緊急要請に基づき、県内に常設しているドローンポートを活用した被害状況の緊急調査を実施しました。常設ドローンポートや実証時の知見を災害時の初動対応に活用したものです。

石川県とKDDIスマートドローンは、こうした実証と実災害での活用を通じて得られた有用性と課題を踏まえ、本格的な社会実装フェーズに向けた取組を進めています。KDDIスマートドローンは、引き続き自治体とともに、ドローンの社会基盤化に取り組んでいきます。

関連リリース・動画