Starlinkで変わるスマートドローンの未来

2022年12月5日、ドローンの新制度である改正航空法が施行され、目視外飛行によるドローンの活躍の場がますます広がることが予想されます。
目視外飛行でドローンが活躍するためには、ドローンを遠隔で操作、または自動で運航できることが前提条件となってくるでしょう。しかし、山間部や島しょ地域などのルーラルエリアでは、遠隔操作に欠かせないモバイル通信インフラが整っていないエリアもあり、ドローン活用の課題として挙げられています。
この課題を解決するために最適なサービスとして、Starlinkを活用した、「Satellite Mobile Link(サテライトモバイルリンク)」をKDDIが開始しました。Satellite Mobile Linkを活用することで、従来はスマートドローンの導入が困難であった場所も含め、あらゆる場所で導入が可能になります。今後のドローン活用の幅を広げるサービスとして注目されています。

ドローンのビジネス活用方法

近年、幅広い分野で積極的に導入され始めているドローン。日本国内のドローンビジネスの市場は年間で20%以上の平均成長率で急成長していくことが予想され、2027年度の市場規模には7,933億円に達する見込みで注目の市場の一つといえます。(出所:「インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2022』」)

ドローンが活用されている主な分野

BtoBビジネスでは、主に点検、測量、監視、物流、農業分野でドローン利用が進められており、今後ますます活用の場が広がっていくと予想されています。

ドローン活用の課題

ドローンの導入には数多くのメリットがある反面、克服しなければならない課題があることも事実です。技術的課題や法的課題などもありますが、12月5日の新制度施行により、重要度が高まる課題の一つとして、「モバイル通信」の課題が挙げられます。

目視外でドローンを安全に飛行させるためには、飛行中の機体の位置や情報の把握、機体の制御を行うために、機体との通信が必要になります。操縦者から機体が見えない位置にある目視外飛行の場合、Wi-Fi通信では通信することができない場合が多く、モバイル通信を使用することが非常に有効になります。

しかし、現状は人が住んでいない地域などでは通信環境が整備されていないエリアもあり、ドローンの導入が困難であった背景があります。実際にKDDIスマートドローンでもドローンの活躍が期待できる場面であっても、通信環境が課題となり、ドローンの導入を見送ることとなるケースも少なくありませんでした。

そして、今後のレベル3飛行やレベル4飛行の普及に向けて、目視外で安全な飛行を実現させるためには、モバイル通信環境を整備することが求められてきました。

ドローン市場で注目を浴びるStarlink

モバイル通信環境の整備という克服すべき大きな課題が残るドローン市場ですが、この課題を解決するために注目を浴びているサービスがあります。それが、スペースX社が手掛ける衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」です。Starlinkとは、世界中の人々にインターネット接続の提供を可能にするための人工衛星です。2022年10月時点で3,000機超の衛星を打ち上げており、最終的には地球全体をカバーする計画です。

KDDIは、2021年に高速・低遅延の衛星ブロードバンドインターネットを提供するStarlinkをau基地局のバックホール回線に利用する契約を締結し、2022年12月1日に運用を開始しました。さらに、法人企業・自治体向けにStarlinkを活用したau基地局サービス「Satellite Mobile Link」の提供も開始しました。

KDDIスマートドローンでは、Starlinkを活用することで、これまでモバイル通信の提供が困難とされていた山間部や島しょ地域においても、モバイル通信に対応したスマートドローンの提供が可能となります。

Starlinkで広がるドローンの具体的な活用シーン

今後Starlinkをドローン業務に活用することで、建設現場の監視や設備点検、地域配送などにおける活用の幅が広がります。具体的にどのように活用用途が拡大するかをご紹介します。

Starlinkで広がるドローンの活用用途

物流分野

物流分野では、山間部や島しょ地域における日用品や医薬品の配送、災害時の緊急物資配送で活用されています。しかし、実装にはレベル3以上の飛行が必要となり、定期運航を実施している地域は伊那市、小菅村、上士幌町、敦賀市などまだ限られた地域で実施している状況です。

現状はドローン配送の実施地域は少ないですが、今後過疎地域の高齢化に伴う買い物困難者の増加や物流量の増加などの社会課題の解決を背景に、普及していくことが想定されます。

人々が暮らす居住エリアでは基本的に通信インフラが整備されており、ドローン配送は可能ですが、居住エリア間を結ぶルートは従来のモバイル通信の提供エリア外となってしまうことも多く、通信が届くように非効率な迂回ルートを設計する必要性があることや、ドローンでの配送を実施すること自体を断念せざるを得ないケースも多々あります。

しかし、Starlinkを設置することで、最短ルートでの配送や配送が困難であった地域でのモバイル通信を活用したドローンによる配送が可能になります。特に山間部や島しょ地域での配送や、災害時における緊急物資配送でのドローンの活躍は期待が高まっており、その期待に応えるための通信の課題を克服できるようになります。

点検・監視・測量分野

点検・測量分野では、他の分野よりドローンの導入が進んでおり、すでに橋梁、ダム、風力タービン、建物の壁面、プラント、道路、鉄道などの設備点検や建設現場などにおける地形調査や森林資源調査、災害時の地形調査に活用されています。
監視分野では、建設現場や施設の進捗監視・監視業務、災害状況の把握などで活用が期待されています。

今後は、従来のモバイル通信の提供エリア外にあるダムなど、インフラ設備の点検や、それらの建設現場の監視・測量において、モバイル通信を活用した、目視外飛行によるドローン運航ができるようになります。また、監視や点検の用途として、ドローンによる撮影映像の多拠点へのリアルタイム映像配信も可能になります。

災害時の現状を把握する際に、ドローンの遠隔操作ができることで、二次災害に巻き込まれるリスクを回避するメリットもあります。

さらにStarlinkと充電ポート付きドローンを併用して活用することで、モバイル通信の提供エリア外にある設備の点検・監視であっても、現地に人を派遣することなく、遠隔自律飛行で点検業務、監視業務が実現できるようになり、大幅な業務効率化、省人化につながります。

運航管理分野

実際にドローンを運用する際には、業務効率化などの運用面でまだ課題があります。
運用面での課題の解決策として、1対多運航(1人で複数のドローンを運航)の実現に向けた取り組みが始まっています。1か所から複数のドローンを運航する場合、遠隔でドローンを制御する必要があり、モバイル通信が必要となります。その際に、Starlinkの活用でモバイル通信の提供エリア外の通信環境を補うことで、運用面での課題の解決を後押しすることになるでしょう。

まとめ

2022年12月5日、ドローンの新制度である改正航空法が施行されたことで、今後目視外でのドローンの活用が広がっていますが、普及するうえで欠かせないキーワードに「モバイル通信」があります。KDDIスマートドローンでは、Starlinkを活用することで、これまでドローンが活用できなかったエリアでもドローン業務を実現することで、社会課題の解決に取り組んでいきます。

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大林組様事例:ダム建設現場における無人測量・無人監視が可能に。

秩父市様・ゼンリン様事例:被災地域へのドローンによる物資定期配送でStarlink活用