新たなスマートドローンソリューション「鉄塔点検×AI画像解析」が大きな反響を呼ぶ |「ジャパンドローン2023」出展レポート

今回ご紹介するソリューション「鉄塔におけるドローン点検のトータルサポート」

KDDIスマートドローンは、通信鉄塔の点検で培ったドローン活用のノウハウを活かし、送電鉄塔の点検においてドローンによる撮影・データの取得、そのために必要な操縦者の育成、AI画像解析による不良個所の判定支援から、各社の仕様に合わせた帳票の自動作成まで、トータルでサポートする点検サービスを提供しています。

KDDIスマートドローンは、2023年6月26日(月)〜28日(水)開催の「ジャパンドローン2023」に出展し、鉄塔点検業務を効率化するドローン点検サービスをはじめとするスマートドローンソリューションや、ドローンポート、各種ドローン機体などをご紹介しました。

ソリューションの紹介〜大反響の「鉄塔点検×AI画像解析」とは

今年のジャパンドローン展は、「スマートドローンソリューションの社会実装が着実に進んでいる」ことを、深く印象づける展示会となりました。特に、初日から提供開始した「鉄塔点検業務を効率化するドローン点検サービス」は、多くの方からたくさんの質問をいただき、注目度の高さを感じています。

本ソリューションは、送電鉄塔の点検において、ドローンによる撮影・データの取得から、AI画像解析による不良箇所の判定支援、帳票作成までをトータルにサポートするもので、これにより送電鉄塔の点検業務にかかる時間の短縮を図ることが可能です。

当社はもともと、自社アセットである通信鉄塔におけるドローン活用に取り組んできました。また、豊富な経験と実績を活かして、撮影したデータを保存しておくストレージを独自に開発してきました。

最近では、送配電事業者様と送電鉄塔の点検を効率化するためのAIを共同で開発し、鉄塔のドローン点検ソリューションの開発に力を入れてきました。

そして今回、ストレージ機能/不良箇所登録機能の共通機能に、アラヤ様と共同開発した錆検出AIを追加した送電鉄塔向けソリューションの提供を開始しました。

具体的な想定ユーザーは、送配電事業者から点検業務を委託された点検事業者の皆様です。鉄塔点検作業へのドローン活用が進む中で、大量の撮影画像のチェック作業の業務負荷の軽減に役立てて頂ければと思います。

運用の流れとしては、最初にドローンで鉄塔を撮影して、次に取得データをクラウド上のストレージにアップロードし、AI画像解析機能を使って錆をチェックした上で錆以外の不良箇所を追加登録し、帳票(報告書)を作成して出力します。

来場者からの質問に企画開発担当者が回答

KDDIスマートドローンは、本ソリューションを利用するシーン全般をトータルでサポートいたします。来場者から寄せられた質問への企画開発担当者からの回答を、Q&A形式でご紹介し、トータルサポートの詳しい内容をお伝えしましょう。

鉄塔点検のドローン空撮をお願いすることはできますか

KDDIスマートドローンでは不良箇所の検出AIの開発時にどのように撮影を行うと自動検出率が上がるのか、最適な撮影方法についてもノウハウを蓄積しています。関東近郊であれば直接撮影サービスを提供できます。我々は、「KDDIスマートドローンアカデミー」を運営しており、領域専門コースとして操縦者教育プログラム「鉄塔点検コース」を提供しています。受講生は、鉄塔点検に特化したドローン空撮スキルを身につけることができるので、年間の点検基数に応じてフライヤーの育成と撮影サービスの提供が可能です。

また「KDDIスマートドローンアカデミー」は、全国各地のドローンスクールとの提携を進めています。各地のドローンスクールには「ドローン人材の育成」と、「卒業生への撮影役務の提供」、2つの役割を担っていただくというパートナーシップを拡大することで、現場の人材不足解消につなげたいと考えています。

 

ドローンを活用することで、本当に効率化を図れるのでしょうか。

我々がお聞きしている範囲内での話になりますが、送電鉄塔の点検にかかるコストは、各社さんによって異なることもあるそうです。そのため費用という観点では、効率化を実感できるかどうかは各社の判断に依ると思います。

ただし、500kVなどの大きく上るのに時間がかかる鉄塔は、人間が登るよりもドローンを飛ばすことで、大幅にコストを抑えられるというケースがあるとのことです。

我々がよく目にする66kVの小型鉄塔においては、ドローン撮影のみでは効率化できず、AI画像解析を組み合わせることで効率化できると試算しています。非常に数が多く、老朽化も進んでいる小型鉄塔の点検だからこそ、ドローンとAIを組み合わせることで、業務全体としては大幅な効率化につながるのではないでしょうか。

鉄塔に生身の人間が昇るという行為自体が危険を伴うので、安全性向上を図ることを目的に、それがひいては若者の雇用促進につながるという観点でも、鉄塔点検におけるドローン活用は重要であると考えます。

ちなみに我々は、日本全国に24万基ある鉄塔のうち、約半数の12万基程度を、ドローンによる点検の対象として捉えています。他方、鉄塔の点検スパンは10年に1回なので、単純計算でも年間12,000基も点検しなくてはなりません。点検に携わるドローン操縦者の育成が急務と考えており、提携パートナーの拡大とアカデミーを通じた人材育成に尽力していきます。今後は鉄塔点検のみならず、日本全国の様々な点検に対応できるよう対応してまいります。

鉄塔点検におすすめの機体は。

高電圧の送電線に万が一にも傷をつかないよう10m以上の離隔距離を保って撮影しています。このため、送電鉄塔の点検には、遠くから離れて光学カメラズーム撮影できるDJI製のMatriceシリーズがよいですね。特に、「Matrice 300 RTK」は光学ズーム20倍という高性能で、非常に鮮明に撮影できます。ただ、サイズや重量が大きいので、人間が背負って山の上まで登るというユースケースには、「Matrice 30」のほうをおすすめしています。

「Matrice 30」(左)と「Matrice 300 RTK」(右)の展示

また、通信鉄塔の点検には、Skydio製の「Skydio 2+」をおすすめしています。撮影範囲を指定することで、自動的に撮影できるため短時間で撮影できます。

 

―AI画像解析は、錆の検出のみですか?

現在は、錆の自動検出サービスのみをご提供しています。送電鉄塔においては、錆による不良個所が最も多いため、省人化への貢献度も高いと判断して優先的に開発を進めました。

―今後は、錆以外のAI画像解析機能が追加される予定でしょうか。

はい。現在、ボルト・ナットの不良検出機能を開発中です。鉄塔1基につき、数千個のボルトが使われているのですが、それを1個1個、人の目で確認するのは難しく、自動化が求められています。

送電鉄塔では、部材によってシングルナット/ダブルナット、緩み止めや割ピンを使用していたりなど種類が多様です。それらひとつひとつの異常を判定できるよう開発を進めています。

あとは、錆やボルト・ナットのほかにも、例えば座屈など、鉄塔の不良個所はさまざまですが、数10年に1回ぐらいしか現れないものは、AI画像解析には不向きです。そのため、点検アプリでは、人が画像を見て、追加で不良個所を登録できるようにしています。

ソフトウェアのみの利用も可能ですか。

はい。もちろん可能です。ただし、点検報告書の仕様は利用各社で異なる点と、従来の人による点検とフォーマットを統一したいというご要望が多いため、専用帳票の受託開発を前提としたアプリケーション提供とさせて頂いております。

我々は、ドローン人材の育成と、AI画像解析機能の拡充が、鉄塔点検における効率化や人手不足解消の鍵になると考えています。今後も、より多くの点検事業者と全国の点検業務をご一緒させていただいてソリューションを磨き上げ、社会課題の解決を目指してまいります。

展示の全容〜ドローポートを中心に、活用事例や各種機体を紹介

最後に、本年の展示ブースの全容についても、お伝えしておきましょう。まず、スマートドローンソリューションは、前述の「送電鉄塔点検」のほか、「橋梁点検」「風力タービン点検」についても、大型パネルを用いて詳しくご紹介しました。

また、展示ブース入り口で目を引いたのは、物流専用ドローン「Air Truck」とスマートドローンツールズの連携です。このソリューションは、日本全国の自治体で導入が進められている「新スマート物流SkyHub®︎」との連携も強化中で、多くの方が機体の前で足を止めてご覧になっていました。

物流専用機体「Air Truck」

そして、このお隣の、通路から最も目立つ場所に、自動充電ポート付きドローンを2つ設置しました。右が、新製品の「DJI Dock」、左が、当社でも大活躍の「G6.0 & NEST」です。

「G6.0 & NEST」(左)と「DJI Dock」(右)

「DJI Dock」と対応機種の「Matrice 30(Dock版)」は、予想通り大変注目度が高く、ポートを開閉する様子は、数多くの方が動画で収められていました。

「DJI Dock」と「Matrice 30(Dock版)」

その隣には、当社がさまざまな現場で活用してきた自動充電ポート付きのドローン「G6.0 & NEST」を展示。こうして並べてご覧いただくことで、サイズ感や仕様を見比べやすく、ドローン遠隔飛行のイメージもより具体的になったようです。

ちなみに、展示したドローンポートは3種類。もう1つは、屋内用の「Skydio Dock for S2+」です。千葉県君津市にあるドローンスクール「KDDIスマートドローンアカデミー君津校」に、こちらのドローンポートと衛星ブロードバンド「Starlink」を設置して、展示ブースから遠隔飛行させるデモンストレーションも行いました。

また、大型パネルを用いて、ドローンポートの活用事例もご紹介しました。飛島建設様の「Skydio Dock × Starlink」を活用した点検・巡視業務の遠隔運用の事例と、大林組様のダム建設現場で「G6.0 & NEST × Starlink」を活用した無人監視と無人測量の事例です。

両方とも、2023年に実証実験を実施した最新の活用事例で、詳しい内容は当社ホームページ(*)からもご確認いただけます。

(*)

飛島建設様|「Skydio Dock × Starlink」を活用した点検・巡視業務の遠隔運用

https://kddi.smartdrone.co.jp/release/2631/

大林組様|ダム建設現場で「G6.0 & NEST」とStarlinkを活用した無人監視と無人測量

https://kddi.smartdrone.co.jp/case/011/

ドローンの遠隔飛行では、モバイル通信が必須です。今回の展示でも、改めてモバイル通信によって広がるドローンの可能性をお伝えし、さまざまな現場で活用されている機体も展示いたしました。

撮影に適した小型機種で、LTE上空利用可能なスマートドローンツールズ(4G LTEパッケージ)に対応したドローンとしては、ACSL製「STOTEN」、Parrot製「ANAFI Ai」、Skydio製「Skydio 2+」を展示しました。

また、DJI製「Matricew 300 RTK」「Matrice 30」「Mavic 3 Enterprise」も展示。今後は、さらに多種多様な機体のスマートドローンツールズ対応を目指してまいります。