【緊急レポート】最新機種「Skydio X10」 プロパイロットが飛ばして感じた魅力とは?
2024年度上期に提供開始予定の「Skydio X10」は、6つのナビゲーションカメラを使った障害物回避や、従来機種10倍のコンピューティング処理性能、2種の可視光とサーマルカメラがセットになった選べるジンバルカメラ、暗所夜間の自律飛行を可能にするオプション製品Night Senseなど話題多数の注目機種。今回はプロパイロットが実際に飛行してよかった点を緊急レポートします!
今回ご紹介する機体「Skydio X10」
「Skydio X10」は、機体上下6つのナビゲーションカメラで周囲の状況を認識し360°障害物回避できる自律飛行ドローン「Skydio」の最新機種です。メインプロセッサにNVIDIA Jetson Orin SoCを搭載し、従来機種10倍以上のコンピューティング処理性能を実現したほか、選べるジンバルカメラ、サーマルカメラ標準搭載、IP55で防塵防水強化、オプション製品豊富といった、目覚ましいアップデートがあります。
本飛行担当パイロット|浦 裕樹氏(一等無人航空機操縦士)
略歴:プロカメラマンとして約12年、報道やドラマ製作などの現場で撮影業務に従事する。2016年にドローン撮影を開始。2017年より空撮、測量、点検、物流など幅広い分野でパイロットを務め、国内外メーカーのさまざまな機種での豊富な飛行実績を有する。2023年よりKDDIスマートドローン所属。
目次
Skydio X10の試験飛行を福島ロボットテストフィールドで実施
KDDIスマートドローンは2024年1月上旬、福島ロボットテストフィールド(以下、福島RTF)において、Skydio X10の試験飛行を実施しました。
Skydio X10は、2023年9月に米国で発表、同年12月に米国内で出荷開始され、日本でも2024年上半期の提供開始を予定している、注目の最新機種です。
試験飛行当時、まだ日本国内には日本仕様にカスタマイズされた機体が1台しかなく、所有者であるSkydio合同会社のメンバー立ち会い協力のもと、福島RTFの橋梁点検エリアおよび風洞棟において、当社所属のプロパイロットである浦裕樹氏がフライトしました。
Skydio X10は、従来機種と同様に、機体上下に3つずつ合計6つのナビゲーションカメラを搭載しており、Visual SLAM技術とAIを活用した自律的な障害物回避機能を有します。
さらにSkydio X10は、メインプロセッサにNVIDIA Jetson Orin SoCを搭載し、従来機種10倍以上のコンピューティング処理性能を実現してエッジAIの強化を図ったという点も特徴です。
実際に飛行した浦氏に聞くと、「やっぱり障害物検知は変わらず安定して機能していた」といいます。また、「これは感覚の問題かもしれないけど」という前提で、このような感想もありました。
「以前は、スティックを一定に倒してそのまま真っ直ぐ飛んでほしい場面でも、何かを障害物として検知して停止したり、斜めに飛んでしまうという経験もありましたが、今回の試験飛行ではそういった感覚はありませんでした。やはりコンピューティング性能の向上によるものなのかなと感じています」(浦氏)
Skydio X10は、飛躍的な性能向上を体感できるというよりも、熟練パイロットだからこそ感じていたようなAIならではデメリットが緩和されて、「誰もがよりストレスなく飛ばせるになった」といえそうです。
また、プロペラが2枚羽から3枚羽になった点でも、明らかな変化があったようです。
「2+に比べて、プロペラ音は静かですね。3枚羽になって、羽自体も大きくなっているから、それだけ浮力が大きくなるのではないかと。前よりも静かになったと感じました」(浦氏)
試験飛行では、壁との離隔2mでマニュアル操縦飛行し、2秒間隔の自動シャッターで、連続写真を撮影しました。当日は、地上で5〜6m/sの強い風が吹いていましたが、後日オルソ画像を作成したところ、クラックの計測も問題ないことが確認できました。
また、壁との離隔1mを保ったままホバリングできるか、橋桁の下でも問題なく飛行できるかなどの運動性能も確認しました。
福島RTFには、耐風性能を評価できる風洞棟もあります。今回の試験飛行では、風洞棟で機体正面から最大約8m/sの風を約1分間吹きつけて、問題なく飛行継続できることを確認しました。
プロパイロット目線でも「使い勝手のよさが向上」
Skydio X10は、「選べるジンバルカメラ」も大きな魅力です。2024年1月現在、発表されているジンバルカメラは2種類あります。「VT300-Z」と「VT300-L」です。
どちらも、SONY製の狭角カメラ(解像度64MP、視野角50°)と、FLIR製のサーマルカメラ(解像度640×512、視野角40°)が搭載されています。
違いは、もうひとつの可視光カメラ。「VT300-Z」には望遠カメラ(解像度48MP、視野角13°)、「VT300-L」にはワイドカメラ(解像度50MP、視野角93°)と最大2800lmのフラッシュライトが搭載されています。
試験飛行では、「VT300-Z」を使用しました。左がサーマルカメラ、右上が狭角カメラ、右下が望遠カメラです。
早速、ズームを試してみて驚いたのは、「ユーザーインターフェースの向上」です。
まず、標準モードと望遠モードをワンタッチで切り替え可能で、128倍までズームできます。また、4.3倍を境に自動でもモードが切り替わるため、狭角カメラと望遠カメラの使い分けを気にすることなくシームレスに使うことが可能です。
「ズーム倍率を上げていくと自動で望遠に切り替わって、約4倍以下まで下げると自動で標準に戻りました。カメラの切り替えをメニューボタンで操作する必要がないのは楽ですね。また、動画と静止画の切り替えも、以前はメニューに入って選択していましたが、X10はボタンが表に出ているので、ワンタッチでできます。障害物回避のスタンダードとミニマムの切り替えもトップ画面に表示されていて、いろいろな切り替えをストレスなく簡単に行えるようになったと感じました」(浦氏)
ジンバルは上下180°滑らかに動きます。
また、プロポ画面をHDMI出力できるようになった点もポイントです。
「画面をみんなで共有しながら作業を進める現場も多いので、HDMIで外部表示できるようになった点も、すごく重宝されると思います」(浦氏)
サーマルカメラ標準搭載で温度情報を可視化、夜間飛行も可能に
これまで、2+にはサーマルカメラの搭載はなく、X2にのみサーマルカメラが搭載されていましたが、Skydio X10は「VT300-Z」と「VT300-L」どちらのジンバルカメラを選んでも、サーマルカメラが標準搭載されています。
これにより、GPS環境下であれば夜間でも飛行することが可能になりました。また、オプション製品「Night Sense」を使用すれば、夜間や暗所での障害物回避も可能になります。
サーマルカメラの操作性においても、「ユーザーインターフェースの向上」が感じられました。ボタンをタップするだけで、Ironbow、Rainbow、White Hot、Black Hotの表示モード切り替えができます。
ちなみに、X10はスペック的にも価格帯でも、2+とX2の間(X2の上位互換ではない)という位置付けですが、「温度情報の取得」という、X2よりも進化した点がありました。
このため、「Spot」機能を用いれば、撮影しながら対象の温度(絶対温度)を数値で確認することができます。
また、「Region」機能を用いれば、画面上で範囲を選択して、範囲内の最高温度、最低温度、平均温度を表示することができます。
「RJPG形式で保存できるので、ピクセルごとに色情報だけではなく温度情報も残せます。そうすると、後処理で色付けして見栄えを整えたり、CSVファイルに出力してレポーティングもできるので、さまざまな点検調査で使いやすくなるのではないかと思います」(浦氏)
また、設定した範囲内の温度に該当する対象物を赤色でマーカー表示する機能は、インフラ設備における異常検知や、夜間の人の捜索などでも活用できそうです。
このほか、「機体とプロポの接続が速くなった」「映像伝送がより滑らかになった」といった使用感もありました。
バッテリー性能の検証も行ったところ、試験飛行を約25分実施後のバッテリー残量は約40%ということで、飛行時間は2+と比べて1.5〜2倍近くの延伸が期待できそうです。
最後に、こちらは機体、プロポ、バッテリー等の備品一式を運べる、スーツケースタイプの収納ボックス。プロペラをつけたままでも安心して持ち運びできます。
KDDIスマートドローンは、Skydioの日本国内正規代理店として、今回のような試験飛行やデモンストレーションの実施はもちろん、あんしん機体補償や、操縦講習、補助金申請サポートも提供しています。
Skydio X10は現在予約受付中で2024年度上半期の提供開始、モバイル通信対応も予定しています。機体のスペック表や、オプション製品のアタッチメントについては、こちらからご確認ください。
Skydio X10について、購入検討中、PoC実施希望、より詳しい情報を収集中の方は、ぜひこちらからお気軽にお問合せください。