レベル3.5飛行(注1)による、災害を想定したドローン配送実証を新十津川町で実施
~ レベル3.5でのドローン配送実証は道内2例目 ~
2024年3月15日
新十津川町
株式会社エアロネクスト
KDDIスマートドローン株式会社
株式会社電通北海道
新十津川町(町長:谷口 秀樹)と、株式会社エアロネクスト (本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:田路 圭輔、以下 エアロネクスト)、KDDIスマートドローン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:博野 雅文、以下 KDDIスマートドローン)、株式会社電通北海道(本社:北海道札幌市、代表取締役社長執行役員:木村 平、以下 電通北海道)は、3月5日(火)~6日(水)に新十津川町内において、災害時を想定した「ドローンを活用した救援物資配送」実証実験を実施し、3月5日(火)に報道関係者に公開しました。
新十津川町と各社は「ドローンのまちづくりに関する連携協定」を締結しており、新十津川町では、今夏ドローン配送のサービス実装化を目指しており、能登半島地震の被災地における医薬品の配送等、道路が寸断され孤立した集落へのドローン配送が注目される中で、本実証では平時から町内の新スマート物流網を構築し、災害等の有事の際には、「備えない防災」フェーズフリー(注2)の観点で、買い物配送で利用しているドローンを、救援物資や医薬品配送へ転用することを想定したレベル3.5飛行による配送を行いました。
また、先日開校した「KDDIスマートドローンアカデミー 新十津川校」が来年度、物流専用ドローン「AirTruck(注3)」の操縦を学ぶことができる、「物流コース」の設置を検討しており、講習で使用する予定ルートでのデモンストレーション飛行も併せて実施いたしました。
本実証は、エアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流“SkyHub®(注4)”の仕組みを活用し実施するもので、ドローン配送サービス事業を主体とするエアロネクストの子会社、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔)が行いました。
【実証実験概要】
1.背景と目的
新十津川町は札幌市と旭川市のほぼ中心に位置し、基幹産業を農業とする町です。人口は昭和30年の16,199人をピークに減少を続け、令和4年で6,389人となっています。高齢化率は39.27%と、少子高齢化は町の大きな課題となっており、毎年実施しているまちづくりに関する町民アンケートの「住み続けたくない理由」の問において「買い物が不便」「老後の生活が不安」「交通が不便」「働く場がない」という項目がワースト上位を占めています。
そうした町の抱える課題を解決しうる町の新たな魅力として、全農家のうち40%以上の農家がドローンによる農薬散布を行なっているなど、農業分野におけるドローン利用が全国トップクラスである点に着目し、「ドローン」を核としたまちづくりを進めています。「ドローンのまち新十津川」を目指し、さまざまな取り組みを行うことで、新たな雇用の場の創出や、関連交流人口の拡大、地域経済の活性化、移住・定住者の増加、生活の利便性向上を図っていきます。
今回は、今夏ドローン配送のサービス実装化を目指している中で、災害時に普段使用しているドローン配送網を災害利用へ転用することを想定したドローン配送と、ドローン配送に使用する物流専用ドローン「AirTruck」の操縦について学び、目視外飛行を前提とした実地訓練を積むことが可能な、国内初の「物流コース」の設置を計画しており、そちらで使用する予定ルートでのデモンストレーション飛行も併せて実施いたしました。
2.実施内容
ルート①:新十津川町農村環境改善センター みらいえ → 吉野地区活性化センター
地震などの災害時、土砂崩れなどで道路が寸断された場合、中心部から少し離れた町の西側に位置する吉野地区は陸路ではアクセスできず、孤立してしまう可能性があるため、そうした際に、ドローンを活用して空から物資を届けることを想定し、実証実験を行いました。
(片道飛行 距離約13.4km、約35分)
ルート②:吉野地区活性化センター ⇄ 吉野駐車公園
次年度に設定を検討している「物流コース」で、使用を想定している飛行ルートとして、“初級ルート”、“上級ルート”を実証飛行しました。
“初級ルート”は、河川上の飛行を基本とするルートで、別途許可承諾などが必要な吉野公園を避け、451号線を横断するルートで、横断時は通行の確認が必要となるルートとなります。
“上級ルート”は丘上の飛行を基本とするルートで、別途許可承諾などが必要な吉野公園を避け、451号線を横断するルートですが、高度変化があるため対地高度の確認を行いながらの飛行となり、ルート上に実際はない高架線があることを想定した高高度での飛行を行い、架空の高架線を通行前には一時停止を実施するルートとなります。
(片道飛行 “初級ルート”距離約1.8km、約5分 “上級ルート” 距離約2.1km、約5分)
今後も、「ドローンのまちづくりに関する連携協定」に基づき、新十津川町、各社が相互に連携、協力し、新十津川町の課題や町民のニーズに沿って、ドローンを活用した持続可能な新たな物流網の構築と人材育成による新たな産業の創出など、幅広い分野で新十津川町における「ドローンのまちづくり」に取り組んでいきます。
以 上
資 料
(注1)レベル3.5飛行
「レベル3.5」飛行とは、デジタル技術の活用(機上のカメラによる歩行者等の有無の確認)により、飛行時にこれまでレベル3飛行時に必要だった補助者や看板の配置といった立入管理措置を撤廃するとともに、無人航空機の操縦ライセンスの保有および保険への加入により道路や鉄道等の横断を伴う飛行を容易とするもので、ドローンの運用コスト削減と業務の効率化につながり、ドローン配送の事業化に向けた大きな動きである。
(注2)フェーズフリー
一般社団法人「フェーズフリー協会」(https://phasefree.or.jp/)が提唱し、普及を進めている日常時と非常時という2つのフェーズをフリーにするという考え方で、いつもの暮らし(日常時)と災害が起きたとき(非常時)を分けるのをやめて、日常で使うものを災害時にも役立てようというもの。東日本大震災後に提唱されはじめており、現在ではさまざまな分野に広がり始めている。
(注3)物流専用ドローン AirTruck
次世代ドローンのテクノロジースタートアップ、株式会社エアロネクストが ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術4D GRAVITY®(注5)により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機である。日本では各地の実装地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高1,300m、外気温-15℃という環境下の飛行実績をもつ(2023年11月)。最大飛行距離20km、ペイロード(最大可搬重量)5kg。
(注4)SkyHub®︎
エアロネクストとセイノーホールディングスが共同で開発し展開する、既存の陸上輸送とドローン物流を繋ぎこみ、地上と空のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流の仕組み。ドローン配送が組み込まれた、オープンかつ標準化したプラットフォームで、ドローンデポ®︎を拠点に、車とドローンを配送手段として、SkyHub®︎TMSをベースに、SkyHub®︎Delivery(買物代行)、SkyHub®︎Eats(フードデリバリー)、SkyHub®Medical(医薬品配送)、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送など、地域の課題やニーズに合わせたサービスを展開、提供する。
SkyHub®の導入は、無人化、無在庫化を促進し、ラストワンマイルの配送効率の改善という物流面でのメリットだけでなく、新たな物流インフラの導入であり、物流改革という側面から人口減少、少子高齢化による労働者不足、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対策、物流弱者対策等、地域における社会課題の解決に貢献するとともに、住民の利便性や生活クオリティの向上による住民やコミュニティの満足度を引き上げることが可能になり、地域活性化を推進するうえでも有意義なものと言える。
(注5)機体構造設計技術 4D GRAVITY®
飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・ 機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用 ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは、この技術を特許化し、4D GRAVITY®︎特許ポートフォリオとして管理している。4D GRAVITY®︎による基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。
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