Starlink活用によるトンネル建設現場からの3D点群データのリアルタイム伝送に成功
~「Satellite Mobile Link」と「点群データ圧縮技術」で定期巡回や施工管理の効率化を推進~
2024年 9月 2日
KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
KDDIスマートドローン株式会社
清水建設株式会社
KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 CEO:髙橋 誠、以下 KDDI)、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下 KDDI総合研究所)、KDDIスマートドローン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:博野 雅文、以下 KDDIスマートドローン)、清水建設株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:井上 和幸、以下 清水建設)は2024年 8月 6日、清水建設が建設中の北海道新幹線、渡島トンネル上二股工区(以下 渡島トンネル)において、Starlinkによるauの通信エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」を活用し、トンネル建設現場からの3D点群データのリアルタイム伝送実証に成功しました(以下 本実証)。
本実証で検証した技術を活用することで、施工進捗や壁面のずれ・亀裂などの異常を、遠隔からリアルタイムで確認できるため、建設現場の定期巡回や施工管理にかかる時間を大幅に短縮することが可能になります。今後も人手がかかる作業のDXを目指し、実用化に向けた取り組みを進めていきます。
3D点群データは、映像と比較し、奥行き情報も含めて立体的な情報を取得できることから、測量用途など建設現場での活用が進んでいます。一方で、現場で測量した3D点群のデータ量は非常に多く、遠隔地と共有するためには3D点群データを保存した記録媒体そのものを事務所に持ち運んだり、膨大な時間をかけてクラウドに伝送したりする必要があるなど、即時共有が困難でした。
今回、渡島トンネル坑内外にSatellite Mobile Linkで構築したau通信エリア網を活用し(注1)、四足歩行ロボットやドローンに搭載したLiDAR 3Dスキャナーで撮影した3D点群データを、清水建設のイノベーション創出拠点「温故創新の森 NOVARE(東京都江東区)」へ伝送する実証を行いました。四足歩行ロボットやドローンなどに搭載可能な小型コンピューター上でも動作する、KDDI総合研究所が開発した3D点群データのリアルタイムエンコーダー(注2)でデータを圧縮することで、伝送に必要な帯域を約1/20にすることを可能にしています。これにより、従来は遠隔での撮影からデータ確認まで数時間かかっていたものが、10秒以内まで大幅に短縮されます。
将来的には四足歩行ロボットやドローンなどを遠隔操作/半自動化/自律化することで、遠隔からの施工管理や監視・検査が可能になります。例えば、土木、建築の分野においては、現場から即時に伝送される3D点群データを用いて、設計情報であるBIM(Building Information Modeling、素材などの属性情報を含む3Dデータ)データと即時に比較して出来形管理(施工物が意図する規格基準に合致するよう管理すること)を行うことや、即時性を求められる進捗確認や鉄筋検査・コンクリート打設検査での異常検知などにおいて、品質・進捗管理の効率化や安全性・生産性の向上に寄与します。また、大規模な点群データを扱うデジタルツインへの応用も期待できます。
KDDI、KDDI総合研究所、KDDIスマートドローン、清水建設は、今後も多様な事業者と協力し建設・土木分野におけるさらなる技術の発展を目指して研究開発・社会実装を進め、未来を切り拓く現場のDXを推進していきます。
本実証の一部は、株式会社アスクの協力のもと、同社から提供を受けたUnitree製の四足歩行ロボットを利用して実施しました。
本実証は、総務省SCOPE(国際標準獲得型)JPJ000595の委託を受けて実施した研究開発の成果です。
なお、本実証に関する展示を、2024年9月3日から9月4日の2日間開催されるKDDIグループ最大級のビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2024」(https://www.kddi.com/summit2024/)の虎ノ門ヒルズフォーラム会場で公開します。ご参加には事前の参加登録(無料)が必要ですので、「KDDI SUMMIT 2024」特設サイト(https://www.kddi.com/summit2024/)からご登録ください。
<別紙>
■本実証について
1.実証概要
建設業界では、物流業界と同様に2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、これによる労働時間減少による工期の遅れや人手不足の深刻化などの「2024年問題」が懸念されています。これに対し、国土交通省は2024年4月にICTを活用した省人対策「i-Construction 2.0」を公表し、建設事業で取り扱う情報のデジタル化により、建設生産プロセス全体の効率化を図ることで、2040年度までに現場の生産性を1.5倍に拡大し、3割以上の省人化を達成する目標を掲げています(注4)。
今回、四足歩行ロボットとドローンに搭載したLiDAR 3Dスキャナーで撮影したトンネル建設現場の3D点群データを、Satellite Mobile Link経由で清水建設のイノベーション創出拠点「温故創新の森 NOVARE」へ伝送しました。伝送に用いたリアルタイムエンコーダーは、KDDI総合研究所が開発した、点群圧縮技術の最新の国際標準方式であるG-PCC(Geometry-based point cloud compression)(注5)に対応したものです。独自の高速化アルゴリズムにより、小型の組み込みコンピューター上のソフトウエアでのリアルタイム処理を可能としています。
本実証では、3D点群データのリアルタイム伝送に必要な帯域を1/20に削減し(約20Mbpsから約1Mbps)、セルラー回線で遠隔の事業所への高品質な3D点群データのリアルタイム伝送を実現しました。また、四足歩行ロボットやドローンに搭載したLiDAR 3Dスキャナーで取得した最大約24万点/秒の3D点群データを、同様に搭載した約200g程度の小型軽量なコンピューター上でリアルタイムエンコード処理を行うことで、3D点群のリアルタイム伝送ができることを確認しました。
なお、G-PCCフォーマットで3D点群データを圧縮し、Starlinkを活用しリアルタイム伝送を行う事例は世界初(注6)です。
2.実証期間
2024年 8月 5日から2024年 8月 6日
3.実証場所
伝送元:北海道新幹線、渡島トンネル上二股工区(北海道二海郡八雲町)
伝送先:温故創新の森 NOVARE(東京都江東区)
4.各社の役割
KDDI | プロジェクト管理、実験企画・推進、サービス化検討 |
KDDI総合研究所 | ユースケースに応じた点群圧縮技術の最適化、実証システム提供 |
KDDIスマートドローン | 本実証のためのドローンのカスタマイズおよびオペレーション対応 |
清水建設 | ユースケース検討、現場実証管理 |
(参考)
■KDDIについて
KDDIは、2024年 5月から、お客さまの事業成長・社会課題解決へ貢献するため、AI時代の新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」(注7)を始動しました。WAKONXのNetwork Layerを通じて、「Starlink」や「Satellite Mobile Link」を建設や土木、エネルギー業界など、大規模インフラを構築・運営するさまざまな企業の皆さまへの導入を進めていくとともに、「Starlink」や「Satelite Mobile Link」を通じたデータの伝送により、さまざまな分野へのデータ活用支援を行います。
KDDIの24時間365日保守・運用体制での支援を通じて、高速通信がつながり続ける環境を提供することで、安心安全の確保・業務の自動化/省人化を実現し、事業課題の解決を目指します。
■KDDI総合研究所について
KDDI総合研究所は、KDDIグループの研究開発の中核として、KDDI VISION 2030「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」の実現に向け、先端技術研究所とKDDI research atelierの2拠点で研究活動を進めています。通信やAIがあらゆる生活に溶け込み、つぎつぎと新たな体験につながる時代を迎え、さらにその先の体験価値向上を目指した研究に取り組んでいます。
■KDDIスマートドローンについて
KDDIスマートドローンは、モバイル通信を用いてドローンを制御することで、安全な遠隔飛行・長距離飛行を実現するサービスの構築を行っています。ドローンによる新たなビジネスの実現や、点検・物流・監視・農業・測量などのさまざまな分野におけるお客さまのニーズに即した機動的なサービスの提供に取り組んでいます。
また、国内10拠点以上でドローン国家資格に対応した無人航空機操縦士資格コースとソリューションに特化した領域専門コースを運営するドローンスクール「KDDIスマートドローンアカデミー」も展開しています。
詳細はKDDIスマートドローンホームページ(https://kddi.smartdrone.co.jp/)をご覧ください。
■清水建設について
清水建設は、ICT・BIM/CIMをベースとしたサイバーフィジカルシステムによるデジタル土木施工を掲げています。その中のひとつに次世代のトンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」があります。「シミズ・スマート・トンネル」は、①ロボット施工生産システム、②山岳高度施工管理システム、③安全支援自動警報システムの三要素技術から構成され、ユニットそれぞれから自動取得されるデジタル情報の連携基盤を介して、高効率な施工管理や発注監督者との共有、類似課題の迅速対応(将来AIバックアップ支援を含む)など、施工段階から供用後の維持管理段階につながる高付加価値インフラの提供を目指しています。
■Satellite Mobile Linkについて
KDDIが提供する「Satellite Mobile Link」は、衛星ブロードバンド「Starlink」をバックホール回線として利用したau通信エリア構築ソリューションです。通信不感地の現場に設置することで、携帯電話による音声通話やデータ通信の利用が可能となり、建設現場と事務所、本支店間の情報伝達の効率や即時性が向上します。また、通信環境整備により、スマートドローンやロボットを活用した遠隔でのインフラ点検やメンテナンスなども実現できるようになります。
(注1)2024年 7月25日 KDDIニュースリリース
鉄道・運輸機構、清水建設、KDDI、国内初、Starlink活用による建設中トンネル坑内の通信エリア化を実現
~「Satellite Mobile Link」で緊急通報や遠隔操作が可能に、建設の2024年問題解決に寄与~
https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-185_3450.html
2022年12月 5日 KDDIニュースリリース
Starlink活用のauエリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」を清水建設が採用
~12月19日から北海道新幹線、渡島トンネル (上二股) 工区工事現場で運用開始~
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2022/12/05/6419.html
(注2)2023年 1月24日 KDDI総合研究所ニュースリリース
点群圧縮技術の最新の国際標準方式に対応したリアルタイムコーデックによる伝送実験に成功
https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2023/012401.html
(注3)OpenSpace:現場/バックオフィスの生産性を向上するために清水建設が導入する、
360度カメラやLiDAR 3Dスキャナーで撮影したデータを基に建設現場を丸ごと可視化するAIクラウドツール。
(注4)2024年 4月16日 国土交通省報道発表
「i-Construction 2.0」を策定しました ~建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)~
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html
(注5)G-PCC:座標ベースの点群圧縮方式で、3D点群をそのまま圧縮する。測量や建設現場の遠隔監視などの
3D空間の座標情報を利用する用途に適している。
(注6)2024年 9月 2日時点 KDDI総合研究所調べ。
(注7)WAKONX:KDDI VISION 2030「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」の実現に向け、
日本のデジタル化をスピードアップするというコンセプトから生まれたブランドであり、
機能群を有するAI時代のビジネスプラットフォーム。
2024年 5月10日 KDDIニュースリリース
AI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」始動
~パートナー企業との共創を通じて、法人のお客さまの事業成長と社会課題解決を支援~
https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-84_3353.html
以 上