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ドローン点検 風力発電設備の自動点検事例（全国）

KDDIスマートドローンは、電源開発株式会社（以下Jパワー）からドローンの「オートフライト（自律飛行）」を用いた風力発電機の撮影点検を受託。2021年は全国4地域（67基）の風力発電設備で点検効率化を推進しました。今回は、本プロジェクト責任者にドローン点検の実用化について伺いました。

【背景】2030年までに導入量を大きく伸ばす陸上風力発電

再生可能エネルギーとして拡大が期待される風力発電。2028年9月から稼働が開始する洋上風力にも注目が集まっていますが、先行して実用化されている陸上風力は全国的に2030年までに導入量を大きく伸ばす目標が設定されています。一方、風力発電機での点検作業にはロープワークによる高い技術が必要であり、効率化と作業負荷の軽減が求められていました。2020年に愛媛県宇和島市や北海道苫前町で行った大規模な実証実験の成功を受け、全国4地域8箇所の風力発電設備に派遣体制を構築し、2021年6月1日よりJパワーの風力発電機67基にオートフライトソフトを用いた「風力点検ソリューション」を提供しました。また2022年度は、新たに5地域での点検を予定しています。

実証実験で大幅な効率化を確認！

JパワーとKDDIスマートドローンは、2020年9月に苫前ウィンビラ発電所などで行った実証実験で、風力発電機のブレードに沿って自動撮影が可能なオートフライトソフトを搭載したドローンによる点検を行いました。かかった時間は1基あたり約20分程度で、これまでのロープワークによる点検の約10分の1程度に短縮することに成功。また、ドローンによって撮影された写真も、従来の点検で作業員が撮影した写真と比べて遜色なく、点検の品質を保持しながら大幅な効率化、時間の短縮が可能であることを確認しました。作業負担の軽減と合わせて、発電機を停止する時間の大幅短縮も実現しています。

【課題】「風力点検ソリューション」による自動点検

ドローンによる全国4地域（秋田県、岩手県、静岡県、山口県）8箇所、計67基の風力発電設備で行った点検では、安定した飛行に加えブレードの損傷などを詳細に確認するために高度な撮影技術と画像解析技術が求められました。KDDIスマートドローンが開発した「風力点検ソリューション」では、マニュアルフライトでセンターハブの位置を合わせるだけでその後は、オートフライトソフトによって各ブレードを4方向から自動撮影することが可能です。1基につき200〜300枚程度撮影された画像は、クラウドにアップすることでAIが自動解析し損傷や異常箇所を抽出。専門家による損傷箇所のレベル判定が行われ、損傷箇所・損傷レベルのレポートを自動で作成します。ロープワークによる点検作業の軽減だけでなく、これまで作業者が行っていたレポート作成の負荷も大幅に軽減するとともに、迅速な点検結果の共有が可能になります。

過酷な風力発電設備点検

風力発電設備は、沿岸・海岸・高原・岩壁・山間部など風が強い場所に建設されているため、点検に使用するドローンは落雷や濃霧の発生などが多い過酷な自然環境内での飛行が余儀なくされます。また各風力発電機メーカーにより機構やブレードの形が異なるため、綿密な事前設定が求められます。ある点検では、マニュアルフライトによる点検を行いましたが、強風の中で飛ばすには高度なフライト技術が必要であり、鮮明な撮影を行うために太陽の位置を考慮し、シャッター速度やISO感度を調整する必要がありました。こうしたトライアンドエラーを繰り返し、オートフライトを含む「風力点検ソリューション」を都度アップデートしています。
さらにお客様の要望に応じて、ブレード以外のタワーやナセルの撮影点検も実施しています。

【展望】ブレード以外の設備点検や3Dモデリング化

現在は、オートフライトソフトによってブレードのみを撮影していますが、今後は3Dモデリング(三次元モデル化)を活用することで、より高度に損傷箇所を確認する技術検証も行っています。
さらに、（衛星を利用した）LTEのエリア化が進めば、遠隔地からドローンの自律飛行や遠隔操作により、風力発電設備の監視や点検が行える世界がすぐそこまで来ていると感じています。
実証実験は2020年に行いましたが、KDDIスマートドローンによる事前調査は2019年より開始しており、現在までに数百基の設備での飛行実績があります。この知見を活かし、鉄塔・高所・洋上など、風力以外のさまざまな構造物の点検作業を人に代わり安全に行えるよう、より幅広い分野での実用化を目指します。

インタビュイー

KDDIスマートドローン株式会社
営業部
シニアエンジニア
清水 利明

使用した機体
Matrice300RTK（DJI） ＋ H20Tカメラ