活用事例
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全国13地域53機のドローンを遠隔管理 レベル4に向けた国内最大規模の実験事例

KDDIスマートドローンは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択を受け、ドローンの運航管理を行う国内最大規模の実証実験を実施しました。今回は、本プロジェクト責任者にレベル4運用を見据えた運航管理システムの重要性について伺いました。

実証実験概要

日時:2021年10月27月
場所:全国13地域(北海道、宮城県、福島県、東京都、石川県、岐阜県、静岡県、三重県、兵庫県、高知県、長崎県、大分県、宮崎県)
概要:全国13地域で計52機のドローン同時飛行及び運航管理実証
使用機体:PD6B、Matrice300RTK(DJI)など

【背景】レベル4運用を見据えた環境整備と技術開発

ドローンは安全確保や利用促進、技術開発などさまざまな視点による課題が官民協働で議論されてきました。その中で、政府が設立した「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は2021年6月に「空の産業革命に向けたロードマップ2021」を策定し、2022年度中にレベル4(「有人地帯における補助者なし目視外飛行」)を実現する方針を定め、レベル4環境下でドローンを運航するために必要な環境整備と技術開発に取り組んでいます。特に、警備・監視分野やインフラ点検分野、エネルギー効率化が求められる物流分野では、レベル4環境下でのドローン活用によって運用負担の減少と省エネルギーが期待されています。

NEDOとKDDIの協働

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2017年度から本事業を推進しており、2020年12月には先行開発した運航管理機能を実環境で実証する研究開発として、KDDIの提案を採択しました。2021年3月には東日本(宮城県)、西日本(兵庫県)、災害時想定(三重県)の3地域で計9機のドローンの飛行状況を運航管理システムで収集する先行実証を実施しました。それを踏まえて、さらに公募で採択した10地域を加え、本実証を進めてきました。

【実証】52機を同時制御する国内最大規模の空域・運航管理システム

本実証では、レベル4を見据えて開発された「空域管理システム」と「運航管理システム」で複数のドローンを制御し、安全に飛行させる検証を行いました。全国13地域にて52機のドローンを同時に飛行させ、東京都港区虎ノ門のオフィス内に設置されたドローン運航管理室で運航管理を実施。全国各地のさまざまな自治体や企業の皆様の協力のもと、空域・運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用可能であり、複数のドローンが飛び交う上空で衝突回避などの管理業務を適切に行えることを確認しました。
また、150メートル以下の低空域を多数のドローンが目視外で飛行するレベル4環境下での安全な運航には、航空業界との連携も欠かせません。空港の管制塔にあたるドローン運航管理室での管理システムの開発・運用・各種オペレーション、トラブルシュートに関しては、日本航空株式会社(JAL)との協働により、多くの知見・サポートを頂きました。

本実証のユースケース例

警備・監視:沿岸部警備、海獣監視、密漁・不法投棄監視、有害鳥獣警備、イベント施設警備など点検:橋梁点検、煙突・工場設備の点検など
物流:市街地及び中山間地域、二次離島での医薬品配送、食料など物資配送など
災害:インフラ、被害状況などの情報収集、音声による避難誘導、孤立集落などへの緊急支援物資搬送、人命捜索など
調査:鳥獣害調査(赤外/可視光カメラによる熊の監視)、海ごみ調査など
農業:農薬散布
空撮:スポーツ、漂着・漂流ごみ空撮調査など

レベル4環境下での運航管理システム

現状、市場では2022年度にレベル3の本格化が想定されています。加えてレベル4の実現のためには、①ドローン機体が対応する機体認証を受けている②運航者が対応する技能証明を取得している③適切な運航管理体制を敷き、許可承認を受ける。という3点が必要となりますが、中でも①の難易度が高いと想定しています。KDDIスマートドローンは機体メーカーとも深く連携させていただきながら、業界の発展、課題解決に向けたルール作りを推進しています。

【課題・展望】多数のドローンが飛び交う社会の実現

本実証では、52機という多数の機体の同時飛行・運航を、100名以上の関係者の協力で安全に行うことができましたが、今後は運用機体の増加と運用人数の削減を同時に実現していくことが、社会実装のポイントになると考えています。また、各機体、自治体企業ごとに複数の運航システムを搭載しているため、海抜基準の高度設定など細かいデータの調整も発生しました。こうした面での事前調整や運航時の体制に関してなど、今後の具体的な課題も洗い出すことができました。
今後、KDDIスマートドローンでは、レベル3での多様な運用実績と、大きな強みである運航管理システムと通信を備えた「スマートドローンツールズ」の活用により、ドローンが人々の暮らしを助ける社会の実現に向けて、空域・運航管理システムのさらなる拡充を目指しています。
また、さまざまな分野における産業用ドローンの申請・承認を含めたスピーディーな導入サポート、簡易運用に最適なソリューションを提供していきます。

水空合体ドローン実証動画
動画が視聴できない方はこちら

インタビュイー

KDDIスマートドローン株式会社
プラットフォーム開発部 兼 サービス企画部
コアスタッフ
山崎 颯

使用した機体
PD6BMatrice300RTK(DJI)