活用事例
  • 点検

ドローン点検 洋上風力発電設備の時間短縮事例(千葉県銚子市沖)

先進的なドローン活用に欠かせない技術である「オートフライト(自律飛行)」。これを用いた実証実験を、洋上風力発電事業の「促進区域」となっている銚子市にて実施しました。今回は、本プロジェクト責任者にオートフライトによる高精度な点検について伺いました。

実証実験概要

日時:2022年1月
場所:千葉県銚子市沖
概要:洋上風力発電設備の高精度点検
千葉県「地域主導型新エネルギー活用プロジェクト支援事業補助金」活用
使用機体:Matrice300RTK(DJI)+ H20Tカメラ

【背景】カーボンニュートラル・再生可能エネルギーの主力電源として期待される洋上風力

一般海域での洋上風力発電事業は、現在「再エネ海域利用法」に基づき国が定める「促進区域」のみで実施されています。今後、日本全国の沿岸で促進区域が指定され、順次洋上風力発電事業者が選定される予定ですが、2021年には3海域で発電事業者が選定されています。銚子市もその一海域であり「ゼロカーボンシティ銚子」に向けた取り組みが進められています。銚子市の促進区域の運転開始予定は2028年9月ですが、促進区域では最大30年間の海域占有が認められており、長期間にわたる洋上風力発電設備のメンテナンスを地元で担うため、銚子市ではドローンによる点検をはじめとするメンテナンスに関する実用化への取り組みを行っています。

洋上風力発電のメリットとは?

海外ではすでに実用化が進んでいる洋上風力発電は、世界6位の海岸線の長さを誇る日本において最適な再生可能エネルギーであると考えられており、カーボンニュートラルの実現に繋がります。洋上であることの大きなメリットとして、土地や道路の制約がなく大型風車の導入が比較的容易であること、遮蔽物がないことで風の乱れが少ないという風況の良さ、景観や騒音への影響が小さいことなどが挙げられます。

銚子市について

銚子市は、2017年4月に洋上風力推進室を設置し、漁業や地域と共生する洋上風力発電の実現に向けた取り組みを進めてきました。2020年には、洋上風力発電産業に主体的に関わることを目指し、銚子市漁業協同組合、銚子商工会議所とともに発電施設の運転管理やメンテナンス業務などに取り組むことを目的とした「銚子協同事業オフショアウインドサービス株式会社」を設立しています。

【実証】船上からのオートフライトによる高精度点検の実現

2022年1月、銚子沖約3キロメートルにある洋上風力発電設備付近まで船舶で近づき、船上から点検用ドローンをハンドリリースし、「オートフライトソフト(ブレード点検自律飛行ソフト)」を用い1基 3ブレードを12方向から撮影・点検。従来のマンパワーでは1日1基程度しかできなかった作業を、およそ50分(移動含め90分)で完了するなど、点検スピードを飛躍的に向上させることに成功しました。

洋上風力点検ではどのような技術がベースとなっているのか?

本実証で活用したのは、多くの実績のある陸上風力設備点検の「風力点検ソリューション」の技術になります。本ソリューションはブレード周囲を自律飛行し、撮影したブレードの画像データからAI解析による損傷個所のスクリーニング・画像解析を可能とします。また生成したレポートはクラウドで管理することが可能となります。洋上風力発電は、陸上風力発電に比べ大規模な設備となり、また洋上という立地故に設備下からの目視点検が非常に困難だという特徴があります。加えて陸上で行われてきたロープアクセスによるブレード点検は、危険が伴うとともに時間がかかるため環境的なハードルが高く効率的ではありません。ドローンの活用による自動点検・監視によって安全性の向上とともに、維持管理費のコスト削減を実現できると期待されています。

撮影したブレードの様子

【課題・展望】浮体式洋上風力設備への対応

課題としては、ドローンの性能面と離着陸時の安全性向上が挙げられます。 また本実証では、スピーディーな着床式洋上風力設備の点検・撮影に成功しましたが、今後は浮体式洋上風力設備での活用も必須となります。浮体式の場合、波によって設備自体に揺れが発生するため、その揺れに追随しながら点検を行うことが必要になってきます。KDDIスマートドローンでは、そのような浮体式洋上風力設備の点検にも対応出来るよう今後開発を進めて行きます。

インタビュイー

KDDIスマートドローン株式会社
営業部
コアスタッフ
原 宜之

使用した機体
Matrice300RTK(DJI) + H20Tカメラ