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ドローン物流 自治体事例(富山県南砺市平)

モバイル通信でつながったドローンにより、新たな価値を創造する「スマートドローンツールズ」。それを用いた物資輸送実験を富山県の中山間地域にて実施しました。今回は、本プロジェクト責任者に自治体が主導する中山間地域のドローン物流について伺いました。

実証実験概要

日時:2021年11月26日
場所:富山県南砺市平(なんとし たいら)地域
概要:中山間地域におけるドローン物資搬送 富山県中山間地域ドローン物流実証実験業務(2021年9月8日〜2022年3月16日)
使用機体:PD6B-Type3(株式会社プロドローン製)

【背景】配送物の受渡し

富山県の中山間地域では、県土の保全等について重要な役割を担っている一方で、急速な人口減少に伴う集落の空洞化や、生活を支えるサービスの衰退などが住民の暮らしに深刻な影響を及ぼし、地域社会の存続さえもが危ぶまれています。また、住民の免許返納および公共交通機関の縮小・撤退や地域の卸売業・小売業者の減少により、将来的に日常生活を営む上で必要となる買い物が困難になる方が発生するおそれがあります。本実証実験は、「富山県中山間地域ドローン物流実証実験業務」の一環として、平地域の住民へ日用品・食料品の配送を想定したドローン活用の有効性を検証しました。

富山県南砺市平地域とは?

南砺市は、2004年11月に8つの町村が合併し誕生した人口約49,235人(令和3年4月1日現在)の自治体。富山県南西端に位置し、市域の約8割が白山国立公園等を含む森林である他、岐阜県境に連なる山々に源を発した河川が北流する自然豊かな地域です。旧平村である平地域では、現在、食材を取扱う商店が1店舗、バス定期便が平日1便しかなく、住民は買い物の際、車で片道25分ほどの山道を往復する必要があります。

【実証】目視外の自律飛行で片道8km、最大3kgの物資搬送

2021年11月26日に行われた本実証では、電波環境・支障物などの現地調査を経て設定した飛行ルートにしたがい、平野部の南砺市平市民センターから受け渡し地点である集落までの片道約8kmを自律飛行。補助者なし目視外自律飛行でパン・卵・清涼飲料水・歯ブラシなど約3kgの食料品や日用品の搬送に成功しました。KDDIスマートドローンでは、2020年より長野県伊那市などで操縦者の目視外自律飛行を実現する「スマートドローンツールズ」を活用した物資搬送用ドローンの本格運用を行っていることから、国土交通省の飛行許可承認、飛行ルートの設定、現地でのオペレーションなどを含め、準備段階から約2ヶ月という短期間で、長距離輸送を実現することができました。
(食料品・日用品の詳細 :五箇山豆腐、卵、コーヒー(粉ボトル)、500ml清涼飲料水、パン、フリーザーバッグ、歯ブラシ、ポケットティッシュ、ハンドソープ、手袋)

スマートドローンツールズとは?

本実証で使用した「スマートドローンツールズ」は、モバイル通信を用いた遠隔監視・制御により、ドローンの目視外自律飛行を可能にします。4G LTEの利用により、タブレットで飛行状況をリアルタイムで監視することで、緊急着陸などの遠隔操作にも対応できることから、安全な目視外自律飛行を実現しました。こうした技術によって、広域監視・配送・点検・測量など、幅広い分野での課題解決・業務効率化に向けてサービスの導入から運用までトータルでサポートいたします。

運航管理画面

【課題・展望】中山間地域特有の課題解決に向けて

同じ中山間地域である長野県伊那市での実験で得た知見によって、今回の実証実験は非常にスムースに行われました。しかし、飛行ルート設定に伴う事前調査では、ルート上に安全性が不可欠な送電線やダム、プライバシーの配慮が必要な温泉施設があるなど、中山間地域特有の課題が改めて明確になりました。今後ドローンの性能向上や遠隔医療・医薬品ドローン配送などにより、ルートおよび配送物資の多様化を目指したいと考えています。また、平地域では集落までのアクセスが一本の山道しかないことから、災害時の緊急物質搬送への転用という物流面のみならず、土砂崩れなど被害状況の一次確認などへの活用も想定し、ドローンの利活用を推進したいと考えています。

インタビュイー

KDDIスマートドローン株式会社
営業部
コアスタッフ
瀧川 智志

使用した機体
PD6B-Type3(プロドローン)