- 運航管理
- 監視
ドローン監視 建設現場の効率化・省力化に向けた実証実験
今回使用したドローン「G6.0&NEST」について
「G6.0&NEST」は、ドローンの自動充電が可能なポートとドローンがセットになっており、モバイル通信を用いた運航管理システムで制御することにより、遠隔地からポートの開閉、ドローンの離発着、自律飛行が可能となります。離発着所に人を派遣せずとも、遠隔操作でのドローン運航が可能となることから、さまざまな建設現場での活躍が期待できます。
国道1号・23号等の渋滞緩和などを目指し、三重県四日市市で行われている国道1号北勢バイパス事業。そのうち飛島建設さまが施工を担当する「令和2年度北勢BP坂部トンネル工事」において、飛島建設さまは、KDDIスマートドローン株式会社とともにドローンによる建設現場の地表面の異常を監視、点検をする実証試験を行っており、現場責任者の飛島建設 坂部トンネル作業所 所長 藤本克郎さま、実証試験を推進している飛島建設 技術研究所 研究員 勝部峻太郎さま、KDDIスマートドローンの貴島康二氏の3名にお話を伺いました。
目次
土被り最小約3mの難工事の坂部トンネル工事
藤本所長:令和2年度北勢BP坂部トンネル工事は、国土交通省が令和6年開通を目指している国道1号北勢バイパス事業の一部です。全延長870mのうち、すでに745mはⅠ期、Ⅱ期工事で別事業者により掘削済みで、Ⅲ期工事として、残りの125mの施工を当社が担っています。
坂部トンネルは標高70~80mの丘陵地を貫いていますが、上部はほぼ全線にわたって営業中のゴルフ場です。中でも今回施工する第Ⅲ期工事ではトンネル上部の土被りが最小約3 mになる区間があり、脆弱な未固結地山を最小土被り3mで掘削するといった、トンネル工事としては非常に難しい工事です。
そこで、このような条件の厳しいトンネル工事の実績が豊富な当社が施工を担当することになりました。
Ⅰ期工事ではトンネル掘削に伴い200mmを超える地表面沈下が発生しており、Ⅲ期工事ではトンネルが完成するまでの沈下量を合計50㎜以内に抑えなければなりません。施工中は常時、トンネル直上のゴルフ場の地表面を重点的に監視しながら、慎重に施工を進めていく予定です。
レベル3飛行による建設現場での実証試験
勝部研究員:ドローンポート(NEST)をヤードに搬入し、レベル3飛行(無人地帯における補助者なし目視外飛行)の承認を受けた上で、7月初旬に全自動による飛行を実現し、本格的な実証試験をスタートさせました。
貴島氏:今回の実証試験は、工事による影響で変動が起きる可能性のある幅30m×長さ100mほどの場所を計測対象エリアとして、そのすべてが含まれるように最適な飛行高度・ルートを設定し、モバイル通信を使って、遠隔で自動飛行を行いました。計測対象エリアに到着すると、機体のカメラの角度を変えて自動で百数十枚もの写真を撮影していきます。着陸後には自動で写真をアップロードし、その画像を解析して3Dモデリング化し、地表面に異常がないかの確認が取れました。
実証試験の構成イメージ
貴島氏:離発着所に人を派遣せずに、モバイル通信を使用したドローンの全自動飛行の実用化はまだ日本国内においても例が少なく、実証試験にあたって何を考慮すべきか、法制度上、どこをケアするべきかなどの懸念点を1個1個確認して潰していくという状況でした。飛行許可申請の際には機体から発信されるテレメトリ情報等を活用して、レベル3飛行承認を得たというのは特筆すべき点だと思います。実際に建設現場でのレベル3飛行の承認を受けた事例はほぼなく、住宅地に近い環境で国から承認を得られたことは、ドローンがさまざまな建設現場に対応できることを示すものであると考えています。
さらなる精度の向上で建設現場の課題を解決
藤本所長:早く、安く、安全に高品質な構造物を提供することが建設会社の使命です。ドローンや各種センサを使った自動計測は現在でも活用されているものの、やはり今回のような現場の場合、状況を詳細に技術者の“目”で観察することが必要になります。しかし定期的に人の目で観察するとなると、人員が余分にかかってしまうので、その監視業務を、全自動のドローンが代替することで、省人化・省力化が実現できると考えました。将来的には、ドローンが全自動で撮影してアップロードした画像を解析し、3Dモデリングされた画像を測量に活用できる精度での観測が可能になれば、さらに幅広い建設工事現場での活躍が期待でき、建設現場の課題解決につながると思います。
建設現場では、少子高齢化の影響による技能者や職員の減少が問題になっています。一方で、働き方改革も同時に取り組む必要があり、生産性の向上に向けて、施工のロボット化やドローンの導入、ICTの活用などによる現場の近代化や省力化・省人化を考えて、若い世代が魅力を感じる仕事にしていくことが重要だと考えています。
移動できるセンサとしての可能性
貴島氏:私自身これまで点検、監視という用途の実証実験が多かったのですが、今回のような地面の微妙な凹凸を見ていくというという経験は初めてで、知見が少ない部分がありました。その分野に関しては、飛島建設さまにアドバイスをいただきながら進めていけたので、とても心強いパートナーでした。私どもとしてもとても勉強になりました。
勝部研究員:私たち建設会社としては、ドローンは「移動できるセンサ」と考えています。さまざまなセンシング機器をのせたり、カメラを搭載して空を飛ぶカメラとして使うなどさまざまな可能性が考えられると思っています。人間の目を拡大するという役割が一つの可能性だとすると、もう一つはドローンが撮影したデータを機械学習やAI的な技術を使って3次元的なデータに加工して、地形の把握に活用したり、工事の進捗など変動するものを「見える化」して分析し、そのデータを施工にフィードバックすることで、工事の効率化、省力化を実現するという役割です。今回の実証実験の結果をもとに、ドローンのさらなる有効な活用法を探っていきたいと考えています。