- 点検
ドローン点検 ダム、水力発電設備の点検効率化事例
KDDIスマートドローンは、全国に点在する電源開発株式会社(以下Jパワー)所有設備のドローン点検実証を、2021年11月から順次実施しました。今回は、本プロジェクト責任者に複数の電力関連施設をドローンで撮影・三次元モデル化することなどで点検作業の効率化につながった事例について伺いました。
実証実験概要
日時: | 2021年11月〜2022年3月 |
場所: | 全国に点在するJパワー所有施設 |
概要: | 水力発電施設、ダム、配電線、建屋など電力関連設備の点検 |
使用機体: | Matrice300RTK(DJI)、SkydioS2(Skydio)、G6.0&NEST(CIRC)、FiFish V6(QYSEA) |
目次
【背景】ダムを含むさまざまな設備からなる水力発電所
Jパワーが全国に所有している水力発電設備でドローン点検の実証実験を行いました。水力発電に関連する設備は、電線路などの電気設備、ダムなどの土木設備、建屋などの建築物と大きく3種に分類することができます。危険な高所や広大な敷地に点在する各設備の点検には非常に労力がかかっており、ドローンが点検で利用可能なのかの検証を行いました。
JパワーとKDDIの協力体制
Jパワーは、KDDIスマートドローンの協力のもと、2021年8月に設備点検でのドローン活用を推進する総合窓口を社内に設置しています。本実証以外にも、総合窓口を通じてJパワーの電力設備点検技術と、KDDIスマートドローンの飛行・運用技術を組み合わせ、水力発電、火力発電、風力発電などの電力設備へのドローン点検等の適用を検討する取り組みを行っています。
【実証】電気設備、土木設備、建築物をドローンで撮影
本実証では配電線、ダム、建屋などの電力関連設備をドローンで撮影・三次元モデル化し、作業の効率化、既存の点検作業との精度比較、代替可能性などを検討しました。電気設備、土木設備、建築物といった3種の設備において、今回はおもに
① ダム堤体(コンクリート面クラック等)
② 取水口(状況確認、コンクリート面クラック等)
③ 洪水吐(コンクリート面クラック、ゲート類鋼構造物の発錆確認等)
④ 水圧鉄管(管路の変状、発錆等)
⑤ 建屋外観(壁面クラック、剥離、雨どい点検等)
⑥ 放水口(状況確認、コンクリート面クラック)
⑦ 開閉所(鉄構、架線、保安保護柵、碍子等)
⑧ 送電鉄塔
などの撮影を中心に実施しましたが、現場の方々からは「ここまで鮮明な撮影データであれば、十分点検に利用できる」との声もありました。
特に、電線路や鉄構などの高所やダム堤体など、これまで点検が難しかった部分の撮影に対して、非常に有効であることが確認できました。また、ドローン撮影による設備の三次元モデル化についても「作業指示が明確に行えるようになる」と、作業効率向上に対する期待も高まっています。他に、油流出を想定した河川の空撮、土砂量の計測など、改めてドローン活用の汎用性の高さが明らかになりました。
発電設備ならではの点検とは?
水力に限らず、発電所には稼働中に接近することができない設備が多くあり、停止できる時間が限られているため、短時間での点検、あるいは充電中での点検が求められます。
また、充電中でも接近できない設備では、高性能ズームカメラの活用で錆や落雷痕等の撮影が可能。巨大なダム堤体などのコンクリート構造物についても微小なひびを撮影することができました。
【課題・展望】ドローン+ロボットによる点検へ
今回のドローンによる撮影で、非GPSエリアにおいてドローンによる撮影ができない箇所の存在が課題として確認できました。今後は、そうした場所で小型ドローンや水上ドローン、水中ドローン、さらにドローン以外のロボットを含めた撮影の検討を進めたいと考えています。また、本実証をもとに従来の点検にドローン撮影や三次元モデル化したデータをどのように組み込むことができるかの検討も進めたいと考えています。
さらに、ドローンの点検飛行では、同様の撮影要件で繰り返し撮影を行う必要があることから、三次元ミッション自律飛行についても大きな課題があると感じております。
インタビュイー
KDDIスマートドローン株式会社
営業部
シニアエンジニア
清水 利明
使用した機体
Matrice300RTK(DJI)、SkydioS2(Skydio)、G6.0&NEST(CIRC)、FiFishV6(QYSEA)